ヤグレーザーの効果・痛み・ダウンタイムを徹底解説!シミ・脱毛・肝斑など

ヤグレーザー治療は、美容医療分野で幅広く活用されているレーザー治療の一つです。
肌の深部までエネルギーを届ける特性を持つため、他のレーザーでは難しかった症状にも対応できる可能性があります。
この記事では、ヤグレーザーの基本的な原理から、脱毛、シミ、ほくろ、肝斑といった具体的な効果、治療に伴う痛みやダウンタイム、そして他のレーザーとの比較まで、ヤグレーザーに関する情報を網羅的に解説します。
ヤグレーザー治療を検討されている方が、治療への理解を深め、ご自身に合った選択をするための一助となれば幸いです。

目次

ヤグレーザーとは?基本原理と特徴

ヤグレーザー(Nd:YAGレーザー)は、特定の波長を持つ光を発生させる医療用レーザー機器です。
美容医療分野では、主に1064nm(ナノメートル)という波長のレーザー光が使用されます。
この波長には、他の一般的なレーザーと比較して、いくつかの特徴があります。

ヤグレーザーの基本的な原理は、レーザー光が皮膚の組織内に存在する特定の物質(標的)に吸収され、その際に発生する熱や衝撃波によって標的を破壊したり、組織に変化を与えたりすることです。
ヤグレーザーの場合、主な標的はメラニン色素とヘモグロビンですが、特にメラニンへの吸収が比較的穏やかである一方、皮膚の深部まで到達しやすいという特性があります。

レーザーの種類と波長

医療用レーザーには様々な種類があり、それぞれ異なる波長を持っています。
波長によって、レーザー光が皮膚のどの深さまで届き、どの物質に効率よく吸収されるかが異なります。

  • アレキサンドライトレーザー(755nm): メラニン色素への吸収率が高い。主に脱毛やシミ治療に用いられます。
  • ダイオードレーザー(800~940nm): メラニン色素への吸収率と皮膚の深部への到達性のバランスが良い。主に脱毛に用いられ、蓄熱式脱毛にも利用されます。
  • 炭酸ガスレーザー(10600nm): 水への吸収率が非常に高い。皮膚組織を蒸散させる作用があり、ほくろやいぼの除去、皮膚の表面的な治療に用いられます。
  • ヤグレーザー(1064nm): メラニンへの吸収が比較的穏やかで、皮膚の深部まで到達しやすい。脱毛、シミ、あざ、肝斑、肌質改善など幅広い治療に用いられます。

ヤグレーザーは、その特性を活かして、他のレーザーでは対応が難しいケースにも応用されています。
また、同じヤグレーザーでも、照射方法やパルス幅(レーザー光の出る時間)によって異なる効果を引き出すことができます。
例えば、短いパルス幅で強いエネルギーを瞬間的に照射するQスイッチヤグレーザーは、シミやあざの色素破壊に特化しています。
一方、ごく短いパルス幅(ピコ秒)で照射するピコレーザーの中にも、ヤグレーザーと同じ1064nmの波長を持つ機種があり、さらに細かい色素破壊や肌質改善効果が期待されています。

ヤグレーザーの効果・適用疾患

ヤグレーザーは、その波長の特性により、多様な肌の悩みに対応できる汎用性の高いレーザーです。
ここでは、ヤグレーザーが特に効果を発揮する代表的な適用疾患について詳しく解説します。

脱毛への効果

ヤグレーザー脱毛は、レーザー光が毛のメラニン色素に反応し、発生した熱エネルギーが毛根の組織を破壊することで脱毛効果を得る治療です。
ヤグレーザーは比較的波長が長いため、皮膚の深いところにある毛根にもエネルギーを届けやすいという特徴があります。

根深い毛・日焼け肌への適用

ヤグレーザー脱毛の大きな利点の一つは、根深い毛や、アレキサンドライトレーザーなどが苦手とする日焼け肌や色黒肌にも対応しやすい点です。

  • 根深い毛: 男性のアゴヒゲなど、皮膚の深部に根付いている毛に対して、ヤグレーザーはその長い波長で効率的にエネルギーを届けることができます。
  • 日焼け肌・色黒肌: ヤグレーザーは、メラニン色素への吸収がアレキサンドライトレーザーほど高くないため、肌の色素に過剰に反応しにくいという特性があります。
    これにより、日焼けしている肌や元々肌の色が濃い方でも、火傷などのリスクを比較的抑えながら脱毛治療を行うことが可能です。
    ただし、完全にリスクがないわけではないため、必ず専門医の診断が必要です。

VIO脱毛と痛み

VIOなどのデリケートゾーンは、毛が太く密集しており、皮膚の色も濃い傾向があります。
ヤグレーザーは、これらの特性を持つVIO脱毛にも適しています。
太く根深い毛に対してもしっかりと効果を発揮しやすく、日焼け肌や色黒肌への対応力もVIOエリアの特性に合っています。

一方で、VIOエリアは皮膚が薄く神経も集中しているため、他の部位と比較して痛みを感じやすい傾向があります。
ヤグレーザー脱毛は、他のレーザー(特に蓄熱式ダイオードレーザーなど)と比較して、一回の照射でより強い熱が発生するため、痛みが強いと感じる方もいらっしゃいます。
痛みの対策については後述しますが、麻酔クリームの使用や冷却などを行いながら治療を進めるのが一般的です。

シミ・あざへの効果

ヤグレーザー、特にQスイッチヤグレーザーは、シミやあざの治療において非常に効果的な選択肢の一つです。
レーザー光が異常に増殖したメラニン色素にピンポイントで反応し、色素を細かく粉砕することで、シミやあざを薄くしたり消したりすることが期待できます。

Qスイッチヤグレーザーによるシミ治療

Qスイッチヤグレーザーは、非常に短い時間(ナノ秒)で高出力のレーザー光を照射することができます。
この瞬間的な強いエネルギーは、標的となるメラニン色素に衝撃波を発生させ、色素の塊を細かく砕きます。
砕かれた色素は、体内のマクロファージ(免疫細胞の一種)によってゆっくりと貪食・排出されることで、シミやあざが薄くなっていきます。

Qスイッチヤグレーザーは、以下のような色素性疾患の治療に主に用いられます。

  • 老人性色素斑(いわゆる「シミ」): 日光によってできる代表的なシミ。
    多くの場合、数回の照射で効果が期待できます。
  • 雀卵斑(そばかす): 細かい色素斑が顔に散らばるもの。
    Qスイッチヤグレーザーのスポット照射が有効です。
  • ADM(後天性真皮メラノサイトーシス): シミのように見えるが、真皮層にメラニンがあるあざの一種。
    通常のシミ治療より回数がかかりますが、Qスイッチヤグレーザーが第一選択となることが多いです。
  • 太田母斑: 顔面の片側に青~灰色のあざができるもの。
    保険適用でQスイッチヤグレーザー治療が可能です。
  • 外傷性色素沈着: 怪我ややけどの後にできる色素沈着。

治療後は一時的に色素沈着(炎症後色素沈着)が生じることがありますが、適切なアフターケアにより徐々に薄れていきます。

シミが消えないケースについて

Qスイッチヤグレーザーによるシミ治療を受けても、期待した効果が得られない、あるいはシミが消えないと感じるケースも存在します。
その原因はいくつか考えられます。

  • 診断の誤り: シミだと思っていたものが、肝斑やその他の疾患だった場合、Qスイッチヤグレーザーのスポット照射では効果がないか、かえって悪化する可能性があります。
    正確な診断が非常に重要です。
  • 肝斑への誤った治療: 肝斑に高出力のQスイッチヤグレーザーを照射すると、炎症を起こし色素沈着が悪化することがあります(レーザーによる肝斑の悪化)。
    肝斑は低出力のレーザートーニングで治療するのが一般的です。
  • 根が深い、あるいは広範囲の色素沈着: 色素が真皮層の深いところにある場合や、広範囲にわたる場合、治療に時間がかかったり、完全に消えないこともあります。
  • 炎症後色素沈着(戻りシミ): 治療後に一時的に色素沈着が濃くなった状態を、シミが消えない、あるいは悪化したと勘違いすることがあります。
    多くの場合、数ヶ月かけて自然に薄れていきますが、中には長引くケースもあります。
  • 体質や肌質: 治療効果には個人差があります。
    肌のターンオーバーの速度や、メラニンの生成しやすい体質なども影響します。
  • アフターケア不足: 治療後の紫外線対策や保湿が不十分だと、炎症後色素沈着が強く出たり、長引いたりする原因となります。
  • 設定の不適切さ: レーザーの出力設定が適切でない場合、十分な効果が得られないことがあります。

このように、シミが消えない原因は多岐にわたります。
治療を受ける前に医師としっかり相談し、ご自身のシミの種類や肌質に合った治療法を選ぶことが重要です。
また、治療後も医師の指示に従った適切なケアを行うことが、良好な結果を得るためには不可欠です。

ほくろ・いぼへの効果

ヤグレーザーは、ほくろやいぼの治療にも用いられることがあります。
特に、皮膚の比較的浅い層にある色素性のほくろや、ウイルス性のいぼ(尋常性疣贅)に対して効果が期待できます。

治療方法としては、Qスイッチヤグレーザーを用いて、ほくろやいぼの色素部分をターゲットに照射し、メラニンを破壊する方法や、熱凝固作用を利用して組織を変性させる方法があります。
ただし、盛り上がりのあるほくろや大きないぼの場合は、炭酸ガスレーザーで組織を蒸散させるか、外科的な切除が適していることが多いです。

ヤグレーザーでほくろやいぼを治療する場合、治療回数は病変の大きさや深さ、種類によって異なります。
多くの場合、複数回の照射が必要となる可能性があります。
また、治療後はかさぶたができたり、一時的な色素沈着が生じたりすることがあります。

どのレーザーが最適か、あるいは外科的な処置が必要かについては、ほくろやいぼの状態を専門医に診察してもらい、診断を受けることが最も重要です。

肝斑への効果

肝斑は、頬骨のあたりなどに左右対称にもやもやと広がる色素斑で、通常のシミとは異なる特徴を持ちます。
肝斑の原因は複雑で、ホルモンバランス、紫外線、摩擦、ストレスなどが関係していると考えられています。
肝斑はレーザー治療が難しいとされてきましたが、ヤグレーザーを用いたレーザートーニングという手法が肝斑治療に有効であることがわかっています。

レーザートーニングは、Qスイッチヤグレーザーを非常に弱い出力で、肌全体に均一に、かつ多層的に繰り返し照射する治療法です。
これにより、肝斑の原因となるメラノサイト(メラニンを作る細胞)を過度に刺激することなく、メラニンを少しずつ破壊・排出を促します。

なぜ低出力のヤグレーザー照射が肝斑に有効なのかというと、肝斑の原因であるメラノサイトが、高出力のレーザーや強い刺激によって活性化しやすい性質を持っているためです。
高出力で照射すると、かえってメラニンをたくさん作ってしまう「炎症後色素沈着」を引き起こし、肝斑を悪化させてしまうリスクがあります。
レーザートーニングは、メラノサイトを刺激しすぎない絶妙な出力で照射することで、肝斑の改善を目指します。

レーザートーニングによる肝斑治療は、1回の治療で劇的な効果が出るわけではなく、通常は1~2週間に一度のペースで、5回~10回程度の継続的な治療が必要となります。
治療期間中も、紫外線対策や摩擦を避けること、内服薬(トラネキサン酸など)や外用薬(ハイドロキノンなど)の併用が推奨されることが多いです。

肝斑は診断が難しいため、ご自身のシミが肝斑かどうか、またヤグレーザーによるレーザートーニングが適しているかどうかは、肝斑治療の経験豊富な医師に診断してもらうことが非常に重要です。

肌質改善・美肌効果(毛穴・ハリ)

ヤグレーザーは、シミや脱毛といった特定の標的だけでなく、肌全体の質感を改善する効果も期待できます。
特に、毛穴の開きや肌のハリといった悩みに対して有効です。

ヤグレーザーを肌に照射すると、真皮層にまで熱エネルギーが伝わります。
この熱刺激は、真皮層にある線維芽細胞を活性化させ、コラーゲンやエラスチンの生成を促進する作用があると考えられています。
コラーゲンやエラスチンは肌のハリや弾力を保つ重要な成分であるため、これらの生成が促進されることで、肌のハリ感がアップし、小じわやたるみの改善、毛穴の引き締めといった効果が期待できます。

また、ヤグレーザーはヘモグロビンにも反応する性質を持つため、肌の赤み(赤ら顔やニキビ跡の赤み)を改善する効果も期待できます。
血行促進作用により、肌のトーンアップやターンオーバーの正常化にも繋がる可能性があります。

このような肌質改善を目的としたヤグレーザー治療は、レーザートーニングのように弱めの出力で繰り返し照射したり、ジェネシスのようなロングパルスヤグレーザーを用いたりします。
治療を継続することで、肌のキメが整い、ツヤや透明感が増すといった美肌効果が実感できることがあります。

ヤグレーザー治療の痛みと対策

レーザー治療を受ける際に多くの方が気になるのが「痛み」です。
ヤグレーザー治療の痛みは、治療内容や照射部位、個人の痛みの感じ方によって異なりますが、一般的には輪ゴムでパチンと弾かれるような感覚と表現されることが多いです。

痛みの感じ方(部位別)

痛みの感じ方は、皮膚の厚さや毛の密度、神経の集中度合いによって部位ごとに異なります。

  • 脱毛:
    • ワキやVIO: 毛が太く密集しており、皮膚が薄い傾向があるため、比較的痛みを感じやすい部位です。
      熱が毛根に強く反応するため、パチンとした痛みに加え、熱さを感じることもあります。
    • 顔や手足: ワキやVIOに比べると毛が細く密度も低いことが多いため、痛みが少ない傾向があります。
      ただし、顔は皮膚が薄いため、口周りなどはやや痛みを感じやすいことがあります。
  • シミ・あざ治療(Qスイッチヤグレーザー): シミやあざの色素にピンポイントで反応するため、病変部にレーザーが当たった瞬間に、チクッとした痛みや熱さを感じます。
    病変が大きいほど、また色が濃いほど、痛みが強く感じられる傾向があります。
  • 肝斑・肌質改善治療(レーザートーニングなど): 弱い出力での照射のため、痛みは比較的軽度です。
    パチパチとした軽い刺激や、温かい感触程度に感じる方が多いです。

痛みの感じ方には個人差が非常に大きいため、不安な場合は事前にクリニックで相談することが大切です。

痛みを軽減する方法

ヤグレーザー治療の痛みを軽減するために、いくつかの方法が用いられています。

  • 冷却: 多くのレーザー機器には、照射と同時に皮膚を冷却する機能が備わっています。
    冷却ガスを吹き付けたり、コンタクトクーリングという方法で照射面に冷却装置を接触させたりすることで、皮膚の表面温度を下げ、痛覚を鈍らせる効果があります。
    治療中も照射部位を冷やすことで、痛みを和らげることができます。
  • 麻酔クリーム: 特に痛みに弱い方や、VIOなどのデリケートな部位の脱毛、シミ取り治療など痛みが比較的強い治療においては、事前に麻酔クリームを塗布しておくことで、痛みを大幅に軽減できます。
    効果が出るまでに時間がかかるため(通常30分~1時間程度)、予約時間の前にクリニックで塗布してもらう必要があります。
  • 笑気麻酔: 吸入タイプの麻酔で、リラックス効果と鎮痛効果があります。
    麻酔クリームだけでは痛みが不安な場合や、広範囲の治療を行う場合に用いられることがあります。
  • 照射設定の調整: 医師がレーザーの出力やパルス幅などの設定を調整することで、痛みを抑えながらも効果的な治療を目指すことができます。
    痛みが強い場合は我慢せず、すぐに医師やスタッフに伝えることが重要です。
  • 声かけ・体勢の工夫: 治療を受ける方がリラックスできるよう、スタッフが声かけを行ったり、痛みにくい体勢を工夫したりすることもあります。

これらの対策を組み合わせることで、ヤグレーザー治療に伴う痛みをコントロールし、より快適に治療を受けることが可能です。
痛みが不安で治療に踏み切れない方も、クリニックで相談することで適切な対策を提案してもらえるでしょう。

ヤグレーザー治療のダウンタイム

ヤグレーザー治療のダウンタイムは、治療の種類、照射出力、照射部位、個人の肌の状態によって大きく異なります。
ダウンタイムとは、治療によって生じた皮膚の反応(赤み、腫れ、かさぶたなど)が回復し、日常生活に戻れるまでの期間を指します。

ダウンタイムの期間と症状

治療内容 主な症状 ダウンタイムの目安
脱毛 赤み、腫れ、毛嚢炎 数時間~数日
シミ・あざ(スポット照射) 赤み、腫れ、かさぶた、炎症後色素沈着 1週間~数週間(かさぶた)
肝斑・肌質改善(トーニング) 軽度の赤み、乾燥感、ごく薄いかさぶた(稀に) 数時間~1日
ほくろ・いぼ除去 赤み、腫れ、かさぶた、軽度なくぼみ 1週間~数週間(かさぶた)
  • 脱毛: 照射直後から数時間、毛穴を中心に赤みや軽度の腫れが生じることがあります。
    多くは当日~翌日には落ち着きます。
    稀に毛嚢炎(毛穴の炎症)ができることがありますが、通常は自然に治癒します。
  • シミ・あざ治療(スポット照射): レーザーを照射した部位は、直後から赤く腫れ、数日以内にかさぶたが形成されます。
    かさぶたは自然に剥がれるまで無理に剥がさないようにしましょう。
    かさぶたが剥がれた後、一時的に照射前よりも色が濃くなる「炎症後色素沈着(戻りシミ)」が生じることがあります。
    これは肌が回復する過程で起こる自然な反応ですが、個人差があり、数週間から数ヶ月かけて徐々に薄れていきます。
    この期間も含めると、完全に落ち着くまで数ヶ月かかる場合もあります。
  • 肝斑・肌質改善治療(レーザートーニング): 低出力での照射のため、ダウンタイムはほとんどありません。
    照射直後に軽度の赤みが出ることがありますが、数時間で落ち着くことがほとんどです。
    稀に乾燥感やかさぶたが生じることもありますが、目立つものではありません。
    日常生活にほとんど制限はありません。
  • ほくろ・いぼ除去: スポット照射と同様、かさぶたが形成され、剥がれるまでに1~2週間かかるのが一般的です。
    かさぶたが剥がれた後は、一時的に赤みやくぼみが生じることがありますが、徐々に平らになり肌色に戻っていきます。

ダウンタイムの期間や症状は、治療内容だけでなく、体質や肌の回復力にも影響されます。
不安な場合は、事前に医師に具体的なダウンタイムの見込みについて確認しておきましょう。

アフターケアの重要性

ヤグレーザー治療の効果を最大限に引き出し、ダウンタイム中の肌トラブルを防ぐためには、治療後の適切なアフターケアが非常に重要です。

  • 冷却: 照射直後、クリニックで十分に冷却を行いますが、帰宅後も必要に応じて保冷剤などで患部を冷やすと、赤みや腫れ、痛みの軽減に繋がります。
  • 保湿: レーザー照射後の肌は非常に乾燥しやすくなっています。
    保湿をしっかり行うことで、肌のバリア機能をサポートし、回復を促進します。
    クリニックから処方された軟膏や、敏感肌用の刺激の少ない保湿剤を使用しましょう。
  • 紫外線対策: レーザー治療後の肌は、紫外線の影響を受けやすくなっています。
    紫外線を浴びると、炎症後色素沈着が悪化したり、新たなシミができたりするリスクが高まります。
    外出時はもちろん、室内でも窓際にいる場合は、SPF30以上の日焼け止めを毎日使用し、帽子や日傘なども活用して徹底的な紫外線対策を行いましょう。
  • かさぶたを剥がさない: シミやほくろ治療でできたかさぶたは、自然に剥がれるまで絶対に無理に剥がさないでください。
    無理に剥がすと、傷跡が残ったり、色素沈着が悪化したりする原因になります。
    通常、1~2週間で自然に剥がれます。
  • 刺激を避ける: 治療部位を擦ったり、洗顔時に強くこすったりしないようにしましょう。
    また、ピーリング作用のある化粧品やスクラブの使用は、肌が完全に回復するまで控えてください。
  • クリニックの指示に従う: 医師から処方された軟膏や内服薬(炎症止め、色素沈着予防など)があれば、指示通りに使用しましょう。
    治療後の経過で気になることがあれば、自己判断せず、必ずクリニックに相談してください。

適切なアフターケアを行うことで、合併症のリスクを減らし、治療の満足度を高めることができます。

ヤグレーザー治療のメリット・デメリット

ヤグレーザー治療には、他のレーザー治療と比較していくつかのメリットとデメリットがあります。
ご自身の肌の悩みや希望に合わせて、これらの点を理解しておくことが大切です。

メリット

ヤグレーザーの主なメリットは以下の通りです。

  • 対応できる肌悩みが幅広い: 脱毛、シミ、あざ、肝斑、ほくろ、肌質改善(毛穴、ハリ、赤み)など、多様な肌トラブルに対応できる汎用性の高さがあります。
  • 日焼け肌・色黒肌にも比較的安全に照射可能: メラニンへの吸収が穏やかなため、他のレーザー(特にアレキサンドライトレーザー)では火傷のリスクが高くなる日焼け肌や色黒肌にも照射しやすいという利点があります。
    ただし、リスクがゼロになるわけではありません。
  • 根深い毛の脱毛に効果的: 波長が長いため、皮膚の深部にある毛根にもエネルギーが届きやすく、男性のアゴヒゲやVIOなどの根深い毛に対して効果が期待できます。
  • Qスイッチヤグレーザーによるシミ・あざへの高い効果: 瞬間的に高エネルギーを照射できるQスイッチモードは、濃いシミやあざの色素破壊に非常に効果的です。
  • 肝斑治療(レーザートーニング)が可能: 従来のレーザー治療が難しかった肝斑に対して、低出力照射によるトーニング治療が有効です。
  • 肌質改善効果も期待できる: 真皮層への熱作用により、コラーゲン生成を促進し、肌のハリや毛穴の開きを改善する副次的な効果も期待できます。

このように、ヤグレーザーはその波長の特性を活かし、幅広い層の方の多様な肌悩みに対応できる点が大きなメリットと言えます。

デメリット

一方で、ヤグレーザー治療にはいくつかのデメリットも存在します。

  • 他のレーザーと比較して痛みが強い傾向がある: 特に脱毛やスポット照射の場合、熱発生量が多く、他のレーザー(特に蓄熱式ダイオードレーザーやアレキサンドライトレーザー)と比較して痛みが強いと感じる方が多いです。
    痛みを軽減するための対策は可能ですが、痛みに弱い方は注意が必要です。
  • 硬毛化のリスク(脱毛): 稀に、レーザー照射によって逆に毛が太く濃くなってしまう「硬毛化」という現象が起こる可能性があります。
    特に産毛や細い毛に対して起こりやすいと言われています。
    原因は完全には解明されていませんが、ヤグレーザーに限らず起こりうるリスクです。
  • 炎症後色素沈着(戻りシミ)のリスク: シミやあざの治療後、一時的に色素沈着が濃くなる「炎症後色素沈着」が生じやすい傾向があります。
    通常は数ヶ月で自然に薄れますが、長引くこともあります。
    特に肌の色が濃い方や、紫外線対策が不十分な場合にリスクが高まります。
  • 治療回数が必要な場合が多い: 肝斑治療や肌質改善、また脱毛においても、1回の治療で完了することは少なく、多くの場合、複数回の継続的な治療が必要となります。
  • 料金: 他のレーザー治療と比較して、特別に高額ということはありませんが、保険適用とならない美容目的の治療の場合は、ある程度の費用がかかります。
    複数回治療が必要な場合は、総額が高くなる傾向があります。
  • やけどのリスク: 経験の少ない医師や不適切な設定で照射した場合、やけどのリスクがあります。
    必ず経験豊富な専門医による治療を受けることが重要です。

これらのメリットとデメリットを理解した上で、ご自身の肌の状態や求める効果、許容できるダウンタイムや痛みの程度などを考慮して、ヤグレーザー治療が最適かどうかを検討することが大切です。

他のレーザー治療との比較

ヤグレーザーは多様な治療に用いられますが、肌悩みによっては他の種類のレーザーの方が適している場合もあります。
代表的なアレキサンドライトレーザー、ダイオードレーザーと比較してみましょう。

項目 ヤグレーザー(1064nm) アレキサンドライトレーザー(755nm) ダイオードレーザー(800~940nm)
波長 1064nm 755nm 800~940nm
皮膚への到達度 深い 中程度 中程度~深い
メラニン吸収率 中程度(アレキサンドライトより低い) 高い 中程度
ヘモグロビン吸収率 中程度 低い 中程度
得意な脱毛 根深い毛、男性のヒゲ、VIO、日焼け肌・色黒肌 細い毛、薄い毛、日本人で一般的な色白肌 様々な毛質・肌質に対応可能(蓄熱式は痛みが少ない)
得意なシミ治療 濃いシミ、あざ、ADM、肝斑(トーニング)、炎症後色素沈着 老人性色素斑、そばかす(ヤグより薄いシミに効果的な場合も) シミ治療にはあまり使用されない
肌質改善効果 毛穴、ハリ、赤み、トーンアップ トーンアップ(メラニン排出促進) 光線力学療法(ニキビ治療など)に応用されることも
痛み(脱毛) 比較的強い(特に熱破壊式の場合) やや強い 熱破壊式はやや強い、蓄熱式は比較的少ない
ダウンタイム 脱毛は比較的短い、シミ治療はかさぶた・炎症後色素沈着あり 脱毛は比較的短い、シミ治療はかさぶた・炎症後色素沈着あり(ヤグより色素沈着が目立ちにくい傾向) 脱毛は比較的短い
適している肌質 色黒肌、日焼け肌を含む幅広い肌質(ただし専門医の判断が必要) 色白肌 幅広い肌質
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